1ページ 広報誌 SPAN2025 第11号 2025年7月発行 ~ 視覚障害者のPC・ICT利用を進めるための掛け橋となることを目指して ~ ICTで視覚障害者の社会参加と就労を支援 SPANは 視覚障害者のSの略 パソコンのPの略 アシストのAの略 ネットワークのNの略 就労支援の現場の現状から SPAN会員 社会福祉法人日本視覚障害者職能開発センター 施設長 伊吾田 伸也  日本視覚障害者職能開発センターでは、就労を目指す方への訓練から、就職時の支援、就労支後の定着支援を実施しています。  当センターの就労移行支援のご利用者の7割以上が障害等級1・2級の重度の方が対象となっており、就労移行支援の平均年齢は44歳となっています。  訓練を受ける前に事前に相談を受けますが、東京近郊だけではなく日本全国から相談は寄せられます。訓練は集団訓練で行っており、通所を原則としています。しかし、コロナ禍からリモートによる支援が認められるようになったため、北海道から四国・九州の方まで訓練に参加出来るようになりました。更に現地で就職、その後の定着支援まで実施した事例も出てきました。  当センターからは毎年20名以上の方が新規就職・復職をされています。これは障害者雇用率が上がったことのみならず、以前に就職した当事者の方たちが道を切り開いてきた影響が大きく、続けて視覚障害者を雇用される企業も増えています。就職者数の増加とともに、その後の定着に向けた支援も広がっています。  現在、日中の訓練を原則としていますが、潜在的なニーズは夜間や休日の訓練にあると感じています。これからも視覚障害者の就労支援全般が広がっていく事を願っています。 画像1(右下):オンラインで日本全国への支援が広がっているイメージ。日本地図とオンラインで繋がってる4箇所の受講者のイラスト SPANの活動理念* SPANは、1999年11月に発足し、2001年にNPO法人の認証を受け、視覚障害者のパソコンやICT(情報通信技術)の利用が快適・積極的に進むよう、点在する組織や情報を繋ぎ合わせることを目指す有志によって活動を続けています。 SPANの特徴と活動* ・特徴 ・ 視覚障害者と晴眼者が同じ立場で活動している ・ 初級講座から資格取得、職業訓練まで、幅広いニーズに応えられる ・ Microsoft Officeのマニュアルなど、豊富なテキストを制作 ・ 通信アプリを利用した遠隔講座など、多様な講習形態に対応 ・ パソコンやスマートフォン・タブレットPCなど、最新の技術にチャレンジ (縦方向箇条書きリストで表示:連続性のない情報ブロック、またはグループ分けされた情報ブロックを示すのに使用するスマートアート。長い見出しのあるリストや上位レベルの情報に適しています。) ・活動  資格取得を含むPC等ICTツールの講座開催と普及  サポートスタッフへの講習会の開催  社会参加と就労を支援  PC等ICTツールの活用促進のための情報収集と提供  ハード/ソフトウェアの評価及び提言  個人や団体、行政との情報交換  他の関係団体の設立及び運営支援  機関紙の発行  企業・行政・団体からの教育・調査研究の受託 (カード型リストで3×3で並べて表示:連続性のない情報ブロック、またはグループ分けされた情報ブロックを示すのに使用します。図形の表示領域を縦横両方向に最大限に使用します。) 2ページ これまでの活動 2024年1月~2025年5月活動実績 講座・職業訓練等 ○遠隔ワンポイント講座 Googleアプリ、Microsoft Officeなどをテーマに14回実施 ○個人対象講座・グループ講座 受講する方のニーズに応じた内容で対面により8回実施 ○遠隔個人講座、遠隔グループ講座 受講する方のニーズに応じた内容で38回実施 ○日商PC検定受験対策コース 遠隔で14名に対して実施 ○無償での遠隔就労PCサポート 受講者のニーズに合わせて3名に対して実施 ○タブレットサロン iPhone、iPadの情報交換の場として遠隔で12回実施 ○在職者訓練 在職中の視覚障害者への職業訓練を対面と遠隔で9社に対し実施 ○ジョブコーチ・障害者雇用管理サポーター支援 在職中の視覚障害者への就労支援を約350回実施 ○就労支援事業 在籍する視覚障害者への職業研修を対面と遠隔で8社に対し実施 ○自治体、企業・団体からの委託によるパソコンやタブレットなどの講座を対面と遠隔で10回実施 イベント等 ○第32回視覚障害リハビリテーション研究発表大会 ポスター発表で参加 ○ロービジョンセミナー パソコン相談で出展 ○視覚障害者就労支援機関の情報交換会 就労支援事業をテーマに発表 ○企業が主催する川畠成道ニューイヤーコンサート iPhoneによるプログラム読み上げデモと弱視体験を会場で実施 テキスト制作・情報提供 ○ユニハートからの助成を受けてGoogleアプリのマニュアルを制作してWebで公開 ○立体イメージプリンターの活用 日商PC検定の受験者にグラフイメージの立体資料を制作・提供 写真1:視覚障害者向けパソコン講座(文京区) 文京区の会場でパソコンを学ぶみなさん 写真2:川畠成道ニューイヤーコンサート2025 音声でのプログラム読み上げデモと弱視体験の様子 これからの活動 2025年活動予定 (6月~12月) 講座・職業訓練等 ○遠隔ワンポイント講座 Microsoft Office、Googleアプリなどをテーマに実施 ○個人講座、グループ講座 受講者からの依頼により、オーダーメイドの講座を対面と遠隔で実施 ○サポーター養成講座(iPhone) iPhoneの操作を視覚障害者に伝える人材を養成する場として実施 ○タブレットサロン iPhone、iPadの情報交換の場として遠隔で実施 ○就労支援事業 企業・行政機関・団体等を対象に視覚障害のある社員・職員への研修を実施 ○在職者訓練 在職中の視覚障害者への職業訓練を対面と遠隔で実施 ○ジョブコーチ・雇用管理サポーター支援 在職中の視覚障害者への就労支援を職場を訪問して実施 ○日商PC検定受験対策コース 日商PC検定の受験を目指す方を対象に遠隔で実施 イベント等 ○第33回視覚障害リハビリテーション研究発表大会 ポスター発表で参加 ○ロービジョンセミナー 就労・ICT相談とSPANの活動紹介で出展 ○視覚障害者就労支援機関の情報交換会 発表で参加 3ページ インタビュー 参加することで世界が広がる! 林 千文さん 60代 女性 晴眼者 写真3:林さん提供写真 Q.SPANの会員になったきっかけは? A.高校生の時に点字を習ったことがあり、地元で視覚障碍者を対象としたパソコンサポートのグループに参加していたのですが、そのグループが解散となり、ネットで検索してSPANを知って会員となりました。 Q.SPANでどのような活動をしていますか? A.タブレット(iPhone)サロンと、タブレット(iPhone)サポーター養成講座のサポートと、ホームページへの講座のおしらせを担当しています。鹿児島と新潟で開催されたiPhone講習会にもサポーターとして参加しました。 Q.タブレット(iPhone)サロンについて教えてください。 A.コロナが蔓延するまでは13時から16時まで対面で行っていましたが、コロナ以後は20時から21時30分まで毎月第3金曜日にオンラインで行っています。SPANの会員でなくても、誰でも無料で参加することができます。知識のある若い方の参加によって、新しい情報を知ることができ、聞くだけでもとても参考になります。質問にもわかりやすく答えてくれます。 Q.タブレット(iPhone)サポーター養成講座について教えてください。 A.iPhoneが使えるようになるための講座です。隔月偶数月の第1日曜日の10時から17時まで開催しています。視覚障碍者への対応の仕方から、実際にiPhoneを使って電話をかけるなどの実践まで行います。講座を聞くのと、実際にやってみるのとでは全く異なります。音声だけを頼りに電話番号を入力するのは想像以上に難しいです。ぜひ、経験してほしいと思います。 Q.趣味など普段の生活について聞かせてください。 A.韓国ドラマが好きで、韓国語を学びたいと思い、写真が豊富な『モラカノ』の著者である視覚に障害を持つ韓国の方を紹介してもらい、Lineで交流をしています。さらに学びを深めたくて、オンラインのカフェトークで学び、韓国に旅行してカフェや博物館へも行きました。語学は誰かがしゃべっている言葉です。年齢も関係ありません。韓国語を通して多くの出会いがありました。 Q.SPANのサポーターをしてよかったことは? A.今まで知らなかった経験をすることができました。若い方と交流を持つことで活発になりました。障害の有無にかかわらず優秀な方と活動することで多くの学びを得ることができました。 Q.みなさんへのメッセージをお願いします。 A.SPANには打てば響くような優秀な方がたくさんおられます。SPANの活動に参加することでみなさんのすばらしさも引き出されることと思います。視覚障碍者ご本人はもちろん、ご家族や多くのみなさんにも講座やサロンに参加していただき、世界を広げてほしいと思います。あなたもSPANで知識を身に着けて、視覚に障害を持つ方の世界を広げるサポーターになってみませんか! * モラカノ韓国語発音第1巻(日本語版): ひらがなだけでできる、韓国語の発音トレーニング 聞き手 平川 純 いつか大阪にもSPANの教室を! 木村 朱美さん 50代 女性 視力:光覚 写真4:木村さん提供写真 Q:SPANを知ったきっかけは何ですか? A:Microsoft Officeのマニュアルを探している中で、北神先生が作成されたマニュアルに出会い、SPANの講習会の存在を知りました。 Q:現在、SPANではどのような活動をされていますか? A:北神先生の講習会を聴講し、講師として活動するための勉強をさせていただいています。月1回のSPAN定例会のお手伝いをさせていただくこともあります。 Q:普段の生活や趣味について教えてください。 A:フリーランスで文字起こしを中心に活動しています。また、大阪府障がい者ITサポーターとして、視覚障害者を対象にしたパソコンやiPhone講習会も行っています。 プライベートでは、プロ野球・オリックスの大ファンで、実際に観戦にも足を運んでいます。サウンド・テーブル・テニスもやります。 現在、大阪・関西万博の公式ボランティアとしても活動中です。 Q:SPANへのご意見や期待していることはありますか? A:東京で実施されている対面での講習会を、ぜひ大阪でも行っていただきたいです。関西圏にも参加を希望している視覚障害者は多く、現状のオンラインだけではサポートに限界があります。リアルな場での取り組みを広げていただけたら嬉しいです。 そのお手伝いをいつか、自分もできればいいなと思い、これからもITの勉強を続けていきます。 Q:最後に広報誌を読んでいる皆さんへメッセージをお願いします。 A:SPANは、視覚障害者のIT学習になくてはならない存在です。多くの人がその力を必要としています。皆さんのご理解とご協力を、これからもどうぞよろしくお願いいたします! 聞き手 萱野 桃子 画像2:チマチョゴリの女の子 画像3:野球場観戦イラスト 画像4:タブレット、パソコンのイラスト 4ページ SPANの活動紹介 「スクリーン・リーダー・ユーザーのためのGoogle Workspace操作ガイド」を公開 SPANでは創立以来、マニュアルやテキストの製作に力を入れています。近年、利用の広がりとともに視覚障害者からのニーズが高まっている、Google WorkSpaceの主要なアプリケーションを、スクリーン・リーダーNVDAで操作するためのガイドを2025年3月に公開しました。Gmail、Googleドライブ、Googleドキュメントなど6つのアプリを取り上げています。WEB、PDF、テキストデータの形式で提供しています。ぜひご活用ください。 https://span.jp/gws-guide/top.html このガイドは、BIPROGYグループ社会貢献クラブ「ユニハート」、ならびにBIPROGY株式会社からのご支援により、制作しました。 制作 : 中根 雅文、特定非営利活動法人 視覚障害者パソコンアシストネットワーク(SPAN) SPANでは、職業スキルの向上を目指す方はもちろん、ICTスキルを高めたい方、また支援をする方のために 以下の講座や訓練、支援を実施しています。  ・個々のニーズに応じてマンツーマンで学ぶ個人対象講座  ・数名で同じテーマを学ぶグループ講座  ・テーマを決めて実施するワンポイント講座  ・通信アプリZoomなどを利用した遠隔講座(個人・グループ・団体)  ・就労中の視覚障害者を対象とした在職者訓練、社員研修  ・就労する視覚障害者とその職場を支援するジョブコーチ、雇用管理サポーター  ・視覚障害者を支援する方のためのサポーター養成講座 写真5:SPANの教室 「レインボープラザ」の愛称で呼ばれ明るくコンパクトな教室です ○ご寄付のお願い 私達は視覚障害者がICTを使いこなすことにより、自立し社会参加、就労していけるよう活動していますが、公的な補助を受けず自主運営している団体です。 皆様からのご寄付が活動を維持するための貴重な財源となっています。 この活動に共感していただける方のご支援をお願い致します。 振込先 郵便振替口座 00110-4-183315 スパン寄付金口 銀行等からの振込 銀行名 : ゆうちょ銀行 金融機関コード : 9900 店番 : 019 店名 : 〇一九店 預金種目 : 当座 口座番号 : 0183315 2025年7月 発行 特定非営利活動法人 視覚障害者パソコンアシストネットワーク(SPAN) 〒108-0023 東京都港区芝浦3-7-13 エスパース田町ANNEX701 電話&ファクシミリ 03-6435-1614 E-mail office@span.jp URL https://span.jp/ Facebook https://www.facebook.com/span.jp X https://twitter.com/npo_span