1ページ 広報誌 SPAN2026 第12号 2026年8月発行 ~ 視覚障害者のPC・ICT利用を進めるための掛け橋となることを目指して ~ ICTで視覚障害者の社会参加と就労を支援 SPANは 視覚障害者のSの略 パソコンのPの略 アシストのAの略 ネットワークのNの略 視覚障害者の就労を支える3つのカ 東京視覚障害者生活支援センター 石川 充英  視覚障害のある方が就職し、業務を続けていくためには「業務遂行力」「業務企画力」「業務工夫力」という3つの力が欠かせないと考えています。この3つの力を、当事者と企業担当者、双方の視点を交えながら考えてみます。  業務遂行力とは、当事者にとってはパソコン操作や支援機器を使いこなすカであり、企業担当者にとっては合理的配慮として支援機器を用意し、基幹ソフトのアクセシビリティを保障することです。  業務企画力とは、当事者が自らの担当を超えて他部署にも目を向け、企業担当者がそれを後押ししながら、部署を横断・縦断する業務を組み立て、仕事の幅を広げていく力です。  業務工夫力とは、当事者が様々な方法に挑戦して業務の効率化を図り、企業担当者がわずかな配慮で障壁を取り除くなど、双方の工夫によって働きやすさを築く力です。  当事者の努力と工夫、企業担当者の新しい提案の受け入れ、そして支援機関のサポート。この三者が密接に連携することで、3つの力は初めて最大限に発揮され、業務内容の展望が開けると考えています。 画像1:オフィスで働く視覚障害者のイメージイラスト。男性がヘッドフォンを装着し、机上のデスクトップPCを操作している。机の傍らには白杖が立てかけられている SPANの活動理念* SPANは、1999年11月に発足し、2001年にNPO法人の認証を受け、視覚障害者のパソコンやICT(情報通信技術)の利用が快適・積極的に進むよう、点在する組織や情報を繋ぎ合わせることを目指す有志によって活動を続けています。 SPANの特徴と活動* ○特徴 ・ 視覚障害者と晴眼者が同じ立場で活動している ・ 初級講座から資格取得、職業訓練まで、幅広いニーズに応えられる ・ Microsoft Officeのマニュアルなど、豊富なテキストを制作 ・ 通信アプリを利用した遠隔講座など、多様な講習形態に対応 ・ パソコンやスマートフォン・タブレットPCなど、最新の技術にチャレンジ ○活動 ・資格取得を含むPC等ICTツールの講座開催と普及 ・サポートスタッフへの講習会の開催 ・社会参加と就労を支援 ・PC等ICTツールの活用促進のための情報収集と提供 ・ハード/ソフトウェアの評価及び提言 ・個人や団体、行政との情報交換 ・他の関係団体の設立及び運営支援 ・機関紙の発行 ・企業・行政・団体からの教育・調査研究の受託 2ページ これまでの活動 2025年1月~2026年6月活動実績 講座・職業訓練等 ○遠隔ワンポイント講座  Googleアプリ、Microsoft Officeなどをテーマに9回実施 ○個人対象講座  受講する方のニーズに応じた内容で対面により7回実施 ○遠隔個人講座  受講する方のニーズに応じた内容で17回実施 ○日商PC検定受験対策コース 遠隔で11名に対して実施 ○無償での遠隔就労PCサポート  受講者のニーズに合わせて2名に対して実施 ○タブレットサロン  iPhone、iPadの情報交換の場として遠隔で12回実施 ○在職者訓練 在職中の視覚障害者への職業訓練を対面と遠隔で8社8名に対し実施 ○ジョブコーチ・障害者雇用管理サポーター支援  在職中の視覚障害者への就労支援を約250回実施 ○就労支援事業  在籍する視覚障害者への職業研修を対面と遠隔で6社6名に対し実施 ○自治体、企業・団体からの委託によるパソコンやタブレットなどの講座を対面と遠隔で11回実施 イベント等 ○第33回視覚障害リハビリテーション研究発表大会  在職者訓練をテーマとしたポスター発表で参加 ○ロービジョンセミナー  パソコン相談で出展 ○視覚障害者就労支援機関の情報交換会  資格取得をテーマに発表 ○資格試験に関するイベント  「受けられる資格から受けたい資格へ」をテーマに実施 参加者約120名 ○就労支援者情報交換会  就労支援者を対象に実施 参加者150名 ○幹部職員用ビデオ収録  内閣官房からの委託により実施 ○企業が主催する川畠成道ニューイヤーコンサート  iPhoneによるプログラム読み上げデモと弱視体験を会場で実施 写真1:2026年2月 視覚障害者就労支援者情報交換会 講演を会場(日本視覚障害者職能開発センター)で聞く参加者 これからの活動 2026年活動予定 (7月~12月) 講座・職業訓練等 ○遠隔ワンポイント講座  Microsoft Office、Googleアプリなどをテーマに実施 ○個人講座、グループ講座  受講者からの依頼により、オーダーメイドの講座を対面と遠隔で実施 ○日商PC検定受験対策コース  日商PC検定の受験を目指す方を対象に遠隔で実施 ○タブレットサロン  iPhone、iPadの情報交換の場として遠隔で実施 ○学生支援事業  視覚障害のある学生のICTスキルを高めるための支援を実施 ○在職者訓練  在職中の視覚障害者への職業訓練を対面と遠隔で実施 ○ジョブコーチ・雇用管理サポーター支援   在職中の視覚障害者への就労支援を職場を訪問して実施 ○就労支援事業  企業・行政機関・団体等を対象に視覚障害のある社員・職員への研修を実施 ○無償での遠隔PCサポート  公的な就労支援が受けられない視覚障害者を対象に実施 イベント等 ○資格試験に関する体験をWebで公開 ○サイトワールド(就労関係の発表で参加) ○第34回視覚障害リハビリテーション研究発表大会に参加 ○視覚障害者就労支援機関の情報交換会に参加 写真2:2025年8月 第33回視覚障害リハビリテーション研究発表大会 ポスター発表の様子 3ページ インタビュー 推し活は最高! 田中 富子さん (50代 女性 弱視) 画像2:推し活に使うグッズ(うちわ)のイラスト。うちわには大きくLOVEと書かれている Q.SPANを知ったきっかけは? A. 視力の低下によりパソコンの画面が見づらくなり、視覚障害者の就労を支援する会 (タートルの会) に相談したところ、SPANを紹介してもらいました。 Q. SPANではどの講座を受講されましたか? A. 遠隔個人講座を受講しました。PCトーカーを用いてのメールとパワーポイントの基本操作を学びました。PDFの閲覧はAIの活用を勧められ、Copilotを体験しました。事前に講師の先生と講座プログラムについて話し合うことができ、希望を取り上げてもらえたので、とても満足した内容となりました。 Q.受講しての感想は? A. マウスから音声操作への切り替えに不安を感じていましたが、慣れればなんとかなることがわかりました。講座終了後に一人で操作してみると思うようにいかないこともありましたが、必要に迫られて使っているうちに、見えない部 分を補うことができるようになりました。もっと早くに受けておけば心の余裕ができたと思う反面、今でよかったのかもと思います。仕事中にポップアップが表示されるとちょっと慌ててしまいます。 Q. 休日はどのようなことを楽しまれていますか? A. エレファントカシマシの宮本浩次さんの推し活をしています。 Q. 具体的には? A. 同行援護を利用し、観光を兼ねて福岡、高松、大阪、神戸、東京など、ライブに足を運んでいます。高松ではうどんの食べ歩きをし、こんぴらさんに参拝しました。北海道の音楽フェスでは、スープカレーなどフェス飯を堪能しました。 Q. 音楽フェスにも行かれたんですか? A. 多くのフェスでは、障害者用の優先席が設置されていることもあるので、疲れたら座ることもできてのんびり自分のペースで楽しめますよ。 Q.SPANの活動についてのご意見をお聞かせください。 A. PC-Talkerを用いたパソコン講座は少ないのでとても貴重だと思いました。ただ、職場のパソコンにPC-Talkerを入れたら動きが遅くなり、今までできていた作業ができなくなってしまいました。事前にPC-Talkerを導入するパソコンのスペックについてのアドバイスをいただけるといいなと思いました。 Q.読者のみなさんへのメッセージをお願いします。 A.目が見えなくなって一人で悩んでいる人がいたら、オンラインの「チャレンジド・ヨガ」などに参加してみてはどうでしょうか?できないと思っていたことも、トライしてみれば、案外できるんだと希望を持つことができます。目が見えないからといって、好きなことを諦めずに明るくドーンと、生きていきましょう!私は熱くてまっすぐでかっこいい宮本浩次さんを推し続けます! 聞き手 平川 純 画像3:色とりどりのライトで照らされたライブ会場のイラスト。イラストの中心にいる女性が推し活うちわを手にステージに立つ人たちを熱いまなざしで見ている スクリーンリーダーとの出会いが、 仕事の可能性を広げてくれました 土井 健太郎さん (59歳 男性 網膜色素変性症) 画像4:デスクトップパソコンのイラスト。デイスプレイがニコニコ笑っている Q.SPAN を知ったきっかけは? A.子どもの頃から網膜色素変性症があり、最近になって急激に見え方が悪くなってきました。 仕事では一日8時間ほどパソコンを使うため、目を酷使して毎日のように頭痛に悩まされていました。画面を見る時間を減らすためにスクリーンリーダーを使おうと思い、インターネットで SPANを知りました。四谷の職業訓練センターでも紹介を受け、仕事を続けながらオンラインで受講できることが決め手になりました。 Q. SPAN ではどのような講座を受講されましたか? A. 遠隔個人講座で PC-Talker の使い方を学びました。週に1回、半日程度の受講を約4か月続け、会社とも相談しながら仕事と両立してレインボープラザでの講義は数回のみで、ほとんどが遠隔で実施されたため、業務との両立が非常に効率的でした。  仕事では主にMicrosoft Officeを使用するため、業務で必要な操作を中心に教えていただきました。受講前からPC-Talkerを導入していましたが、まったく使いこなせていませんでした。講座では基礎から丁寧に教えていただいたおかげで、仕事に必要な最低限の操作はできるようになりました。 Q.受講しての感想を教えてください。 A. 今でも視力は使っていますが、以前は「目で見る」がほとんどだったのが、今ではスクリーンリーダーも併用できるようになりました。割合でいうと、まだ目を使う方が多いですが、音声を活用することで目への負担が大きく減り、毎日悩まされていた頭痛も劇的に少なくなりました。  またPC-Talkerの基礎を学んだことで、「カーソルを読ませたい場所に移動すればいい」という考え方を知りました。そのおかげで、現在はNVDAにも挑戦してみています。SPANで基礎を教えていただいたからこそ、次のステップにも前向きに取り組めていると感じています。 Q. 休日はどのように過ごされていますか? A. 毎日は仕事に追われていますが、休日は妻と旅行に出かけることもあります。温泉旅行が好きで、先日も沖縄へ行ってきました。旅行先で地元のお酒や食事を楽しんでいます。コロナ禍前は海外旅行にもよく行っていました。また、アニメも好きです。音声ガイドが付いている作品はまだ少ないですが、それでも内容を想像しながら楽しんでいます。 Q. SPANの活動について、ご意見をお聞かせください。 A. 視覚障害があると情報へのアクセスが難しく、就職や仕事の継続にも苦労する方が多くいます。そうした中で、仕事を辞めることなく受講できるSPANの講座にはとても大きな意味があると思います。  今回、約4か月かけて学ぶことができましたが、実際に仕事へ戻ると新たな疑問も出てきます。講座終了後にも相談できるようなアフターフォローの機会があると、さらに安心して学び続けられるのではないかと思います。 Q.読者のみなさんへメッセージをお願いします。 A. 目が悪くなると、「もうできない」と思ってしまいがちです。でも、SPANのような支援を利用して少しずつスキルを身につけることで、自分の可能性は大きく広がります。最初の一歩を踏み出すハードルは高く感じますし、簡単なことも簡単にはできません。しかし、その壁を乗り越えると、自分が思っていた以上に仕事の幅が広がり、生活の質も向上します。  私は病気の患者会の代表をしていますが、それでもSPANのことは詳しく知りませんでした。 困ったときは一人で悩まず、支援機関に相談してみてください。私自身も、SPANに出会わなければPC-Talkerでつまずいたままだったと思います。  この広報誌が、同じように悩んでいる方の手に届き、「自分にもできるかもしれない」と思えるきっかけになれば嬉しいです。これからも新しいことに挑戦しながら、自分らしい生活を続けていきたいと思います。 聞き手:萱野 桃子 4ページ SPANの活動紹介 SPAN が提供する資格取得支援 SPAN では、資格の取得を目指す視覚障害者のために以下の支援を行っています。 *日商PC検定受験対策コース  日商PC検定2級・3級の取得を目指す方のための受験対策コースです。 また、対策コースを受講した方はSPANの教室で受験することもできます。これまでに40名以上の方がこのコースで学んで資格を取得されました。 https://span.jp/certification/#con01 *資格試験に関する情報提供  認定NPO法人タートルと共同で、資格試験に関するアンケートを行い、結果を以下に掲載しています。 https://span.jp/useful/#con05  また、2026年度には、同じくタートルと共同で、実際に資格を取得された方の体験記を以下のページで公開する予定です。 https://span.jp/certification/#con02  SPAN は、今後も視覚障害者の資格取得の可能性を広げる活動を続けていきます。  SPANでは、職業スキルの向上を目指す方はもちろん、ICTスキルを高めたい方、また支援をする方のために以下の講座や訓練、支援を実施しています。  ・個々のニーズに応じてマンツーマンで学ぶ個人対象講座  ・数名で同じテーマを学ぶグループ講座  ・テーマを決めて実施するワンポイント講座  ・通信アプリZoomなどを利用した遠隔講座(個人・グループ・団体)  ・就労中の視覚障害者を対象とした在職者訓練、就労支援事業  ・就労する視覚障害者とその職場を支援するジョブコーチ、雇用管理サポーター  ・視覚障害者を支援する方のためのサポーター養成講座 写真3:SPANの教室 「レインボープラザ」の愛称で呼ばれ明るくコンパクトな教室です ○ご寄付のお願い  私達は視覚障害者がICTを使いこなすことにより、自立し社会参加、就労していけるよう活動していますが、公的な補助を受けず自主運営している団体です。皆様からのご寄付が活動を維持するための貴重な財源となっています。この活動に共感していただける方のご支援をお願い致します。 振込先 郵便振替口座:00110-4-183315 スパン寄付金口 銀行等からの振込銀行名 : ゆうちょ銀行 金融機関コード : 9900 店番 : 019   店名 : 〇一九店 預金種目 : 当座  口座番号 : 0183315 画像5:「温かいご支援をお願いします」と前面に書かれた募金箱を両側から二人の人が持っているイラスト。ハートマークで「温かい支援」を表した硬貨3枚が順番に募金箱に入っていく様子 2026年8月 発行 特定非営利活動法人 視覚障害者パソコンアシストネットワーク(SPAN) 〒108-0023 東京都港区芝浦3-7-13 エスパース田町ANNEX701 電話&ファクシミリ  03-6435-1614 E-mail office@span.jp URL https://span.jp/ Facebook https://www.facebook.com/span.jp X https://twitter.com/npo_span