視覚障害者の資格試験に関するアンケートから見えてきたこと NPO法人 視覚障害者パソコンアシストネットワーク(SPAN) 1ページ 認定NPO法人 視覚障害者の就労を支援する会(タートル) 目的・実施方法 視覚障害者の資格取得の受験に関わる実態を明らかにすることにより、当事者の資格取得への意欲向上につなげ、関係者に対しては、視覚障害者の受験時の配慮や、学習時の環境整備について改善を求めていくことを目的とする。アンケートは、メールやSNSを通して依頼し、221名から回答が得られた。 なお、同様のアンケートは2018年にも実施し、リハ大会で結果を発表している (1)回答者属性 ■性別 男性:108人( 49%)、女性:107人(48%)、回答しない:6人 ■年代 10代:1%、20代:14%、30代:14%、40代:17%、50代:34%、60代:14%、70代~:5% 【積み上げ横棒グラフで表示】 ■身体障害者手帳(視覚障害)の等級 1級:64%、2級:24%、3~5級:各3%、6級:1% 他 ■文字(墨字)の見え方 目では全く読めない:53.8% 補助具を用いても文章を読むのは難しい:15.8% 補助具を用いれば文章として目で読める:22.6% 補助具なしで目で読める7.7% 【円グラフ(ドーナッツ)で表示、2段組み左側配置】 ■PC情報取得 ※複数回答 スクリーンリーダー:82.4% 画面調整:34.8% 点字ディスプレイ:12.7% 上記いずれも使用しない:3.2% 【横棒グラフ(%)で表示、2段組み右側配置】 ■視覚障害者になってからの受験の有無 ある:179人(81%) ない:42人(19%)   ■職業 ・会社員 86人 38.9% ・無職 33人 14.9% ・公務員 22人 10.0% ・自営業 19人 8.6% ・福祉施設職員 16人 7.2% ・教員 10人 4.5% ・団体職員 10人 4.5% ・学生 10人 4.5% ・福祉施設の利用者 10人 4.5% ・医療機関職員 8人 3.6% ・職業訓練施設の訓練生 5人 2.3% ・その他 7人 3.2% 【4行3列の箇条書きで表示:テーブル枠線は横罫線内側のみ】 1ページおわり 2ページ (2)資格の取得状況 視覚障害になってからの受験経験率81% ■取得済み資格 ※複数選択 (回答のうち2人以上を分野ごとに表示) 【医療・福祉関係】 1. あん摩マッサージ指圧師 68人 2. はり師 58人 3. きゅう師 57人 4. 社会福祉士 17人 5. 介護福祉専門員 6人 6. 介精神保健福祉士 4人 7. ホームヘルパー 4人 8. 福祉用具専門相談員 3人 9. 公認心理士 3人 10. 社会福祉主事 2人 11. 福祉住環境コーディネーター 2人 12. 理学療法士 2人 【ICT関係】 1. 日商PC検定 23人 2. 日商PC検定文書作成 14人 3. 日商PC検定データ活用 12人 4. ITパスポート 10人 5. 情報処理安全確保支援士 3人 6. 基本情報技術者 3人 7. G検定 2人 8. 第一種情報処理技術者 2人 9. 情報処理技術者 2人 10. 応用情報技術者 2人 11. 日商ワープロ検定 2人 【ビジネス関係】 1. 日商簿記検定 10人 2. 秘書検定 9人 3. 産業カウンセラー 5人 4. キャリアコンサルタント 5人 5. 宅地建物取引士 4人 6. 衛生管理者 3人 7. ビジネス実務マナー検定 3人 8. ビジネス実務法務検定 3人 9. ビジネスキャリア検定 2人 10. 社会保険労務士 2人 【語学関係】 1. 実用英語技能検定 68人 2. TOEIC 20人 3. TOEFL 7人 4. 日本漢字能力検定 6人 5. IELTS 3人 【教育関係】 1. 教育教員免許状 29人 2. 図書館司書 3人 【その他の取得資格】 1. アマチュア無線技士 7人 2. アロマテラピー関係 7人 3. 点字技能士 6人 4. メンタルヘルスマネジメント検定 4人 5. 防災士 4人 6. MIDI検定 2人 【3列の箇条書きで表示:テーブル枠線無、塗りつぶし無】 【2段組み左側ここまで】 【2段組み右側ここから】 ■学習方法、使用教材の種類 ※複数回答(回答数221) 学習方法については、学校42.5%と独学39.8%で半数を占めていた。 以前は見られなかった傾向として、通信、Eラーニングを含む試験対策講座27.6%(一般21.3%、視覚障害者向け6.3%)が多くなり、オンラインでの受講が広まっていることがうかがえた。 職業訓練施設19%(視覚障害者向け16.7%、一般2.3%)、友人知人とのグループ学習10%、その他5%。 使用教材の種類については、データ43.4%、点字34.8%、一般の墨字25.3%、webページ22.2%、録音図書15.4%、拡大文字10.4%、イラストや漫画などの画像2.7%、その他7.2%だった。 その他では、電子書籍やYouTubeなどのオンライン配信を教材として使用している状況もうかがえ、今後も増加が予想される。 ■希望する配慮が受けられないために受験できなかった資格 ※自由記述複数回答(回答数49) 回答の得られた資格は46種類あり、必要な配慮があれば受験したかった資格が多くあることがわかった。記述された内容からは、視覚障害者の個々の見え方は多様なため希望する配慮のニーズも多様であることがうかがえる。同じ試験に対しての配慮でも、PCでの受験やデータ化、紙の問題用紙で拡大鏡の利用、点字での受験など、さまざまな配慮が必要とされていることがわかった。 また、講習が受けられなかったという意見や試験会場が自宅から遠いという意見もあった。すべての会場で同じ配慮が受けられない資格がある実態も明らかになった。 希望していた配慮の種類 ①時間延長 ②スクリーンリーダー ③読上、デイジー ④点字 ⑤拡大読書器 ⑥問題用紙やテキストの整備(データ化等) ⑦マークシート入力対応 ⑧音声入力 ⑨紙での受験 希望する配慮が受けられないために受験できなかった資格名/希望していた配慮 日商簿記検定 ②スクリーンリーダー 1人 ④点字 2人 ⑤拡大読書器 2人 ⑨紙での受験 2人 デジタルアクセシビリティアドバイザー認定試験 ①時間延長 1人 ②スクリーンリーダー 2人 ⑥問題用紙やテキストの整備(データ化等) 1人 日商PC検定 ①時間延長 1人 ②スクリーンリーダー 1人 ⑥問題用紙やテキストの整備(データ化等) 1人 MOS ②スクリーンリーダー 3人 高度情報処理技術者試験 ④点字 3人 介護初任者研修 ③読上、デイジー 1人 ⑦マークシート入力対応 1人 ⑧音声入力 1人 神社検定 ②スクリーンリーダー 1人 ③読上、デイジー 1人 ⑦マークシート入力対応 1人 世界遺産検定 ③読上、デイジー 1人 ⑦マークシート入力対応 1人 ⑧音声入力 1人 ITパスポート ②スクリーンリーダー 2人 ※回答者の多かった資格について、受験当時希望していた配慮を掲載しています。 ※回答者が受験を希望した時点での状況です。配慮については現状とは異なる場合があります。 2ページおわり 3ページ ■受けた配慮(配慮があると回答された項目番号を資格名の右側に表示。分野別上位のみ表示) ※回答者の受験当時の配慮の状況をそのまま掲載しておりますので、現状とは異なる場合があります。  配慮の種類 ①時間延長 ②スクリーンリーダー ③画面調整 ④DAISY ⑤朗読者 ⑥点字 ⑦拡大読書器 ⑧拡大文字 医療・福祉関係 あん摩マッサージ指圧師 ①④⑥⑦⑧ きゅう師 ①④⑥⑦⑧ はり師 ①④⑥⑦⑧ 社会福祉士 ①②④⑥⑦⑧ 介護支援専門員 ①④⑥⑦⑧ 精神保健福祉士 ①④⑥⑦⑧ 公認心理師 ①②③⑥⑦⑧ 理学療法士 ①⑥⑦⑧ 言語聴覚士 ①⑦⑧ 臨床心理士 ①②③ 教育関係 教員採用試験 ①⑥⑦⑧ 学士認定試験 ①② 図書館司書 ①⑥ 放送大学の定期試験 ② ICT関係 日商PC検定 ①②③④⑦ ITパスポート ①③⑥ 情報処理技術者 ①⑥⑦⑧ 基本情報技術者 ①⑥⑦ 情報処理安全確保支援士 ①⑥ ビジネスコンピューティング検定 ①②③ 応用情報技術者 ①⑥⑦ 初級システムアドミニストレータ ①⑥ 情報セキュリティスペシャリスト試験 ①⑦⑧ G検定 ①② Microsoft Office Specialist ①⑦ ビジネス関係 キャリアコンサルタント ①②③⑧ 産業カウンセラー ①②⑥⑦⑧ 日商簿記検定 ①⑤⑦⑧ 社会保険労務士 ①④⑥⑦⑧ 秘書検定 ②⑧ ビジネス実務マナー検定 ①②⑦⑧ 衛生管理者 ①④⑧ 日商秘書技能検定 ① 損害保険募集人 ①③⑦⑧ 販売士 ⑦⑧ インフィニGDS ①⑦⑧ ビジネスインストラクショナルデザイン ①②③ 消費生活アドバイザー ①⑦⑧ 宅地建物取引士 ①⑧ 日商ワープロ検定 ①②③ 語学関係 実用英語技能検定 ①⑥⑦⑧ TOEIC ①⑥⑦⑧ TOEFL ①②③⑤⑥ IELTS ①⑥⑦⑧ DELF ①②⑥ その他の資格 アロマテラピー検定 ①⑥ 日本漢字能力検定 ①⑦⑧ アマチュア無線技士 ①⑤⑥ 実用数学技能検定 ①⑦⑧ UD検定 ①② MIDI検定 ②③⑥ アロマアドバイザー ②④⑥ メンタルヘルスマネジメント検定 ①⑧ 世界遺産検定 ①⑦⑧ ■配慮が不十分と感じた点        ※複数回答(回答数27) 受験時に配慮はあったものの不十分と感じた点については、障害の状況に応じて必要な配慮も変化することを伝えて交渉していくことの困難さを挙げる意見が多かった。点字受験での回答方法の説明不足や、スクリーンリーダーが使用できても環境依存文字が使われていて正確に読上げなかったり、代読や代筆者の知識や能力不足で正確な情報を入手できなかったりしたなどの意見があった。同じ試験でも実施団体によって配慮に差があったり、スタッフの認識不足で認められている配慮が受けられなかったりするという意見もあり、いずれも公平な受験環境で資格試験に臨むための配慮としては不十分であったと考えられる。 一方で、スクリーンリーダーが試験中の専門用語などの文章を正しく読み上げるように設定するなど、視覚障害者の立場に立った配慮がされている資格試験もあり、今後の広がりに期待したい。 3ページおわり 4ページ (3)取得したい資格 ※複数回答(回答数172) 国家資格、公的資格、民間資格、多種多様な資格があげられた。 中でもITパスポートやMOS、日商PC検定などのPC技術・情報処理関係、TOEICなどの語学系、 実務的な衛生管理者や社会保険労務士への関心が高かった。 ■今後資格試験で受けたい配慮※複数回答(%) 試験時間の延長:68.3% 音声PC利用:62.9% 点字の使用:33% 録音による読上げ:26.2% 画面調整PC利用:22.2% 拡大読書器、ルーペ等の使用:21.3% 拡大文字による提供:21.3% 朗読者による読上げ:14% 配慮の必要なし:1.4% その他:0.5% 【横棒グラフ(%)で表示、2段組み左側配置】 ■希望する教材形式 ※複数回答(%) データ:71.9% Webページ:54.3% 録音図書:36.2% 点字:33.9% 拡大文字:19% 一般の墨字:11.3% 画像(イラスト、漫画等):4.5% その他:5.9% 【横棒グラフ(%)で表示、2段組み右側配置】 (4)資格取得についての意見  ※自由記述(回答数117) 以前よりも改善がみられたことや配慮への感謝の意見もあったが、多くの試験では未だ配慮が不十分な様子がうかがえた。個々の状態に応じた様々な合理的配慮(公平な受験環境)の必要性を訴えていくうえで、配慮を要望できる共通の窓口の設置を望む声が多かった。 また、試験での配慮の状況の情報共有、教材や学習環境の改善を望む意見が多く寄せられた。 考察と今後への展望 今回のアンケートでは、2018年(107人)の倍以上の回答数(221人)が得られ、ポスターに反映しきれなかったものも含め多くの意見を収集することができた。 視覚障害者の資格取得への意欲は高く、職業に直結するものから趣味、教養関係など幅広い分野に及んでいるが、学習や試験実施方法などで受験できない、あるいは受験が困難な試験が未だ多くあることが明らかになった。 試験実施機関には、見え方や視覚障害者になった時期によって情報取得の方法は多様であり、必要とする配慮もさまざまであることを訴えていきたい。また、情報通信技術の発達による社会の変化の中で、視覚障害者のスキルも上がりPC利用の状況も変化していっていることを踏まえた対応が求められている。 今後、視覚障害者の資格試験受験の支援をしていくうえでは、当事者ニーズに応えられる体制づくりや、試験実施機関に対する積極的な啓発も必要で、それにより、視覚障害者の社会での活躍の場が更に広がると考える。 上記の課題に対し、タートルとSPAN は引き続き積極的に関わっていきたい。 【QRコード_ポスターテキスト版】 【QRコード_ポスターpdf版】 【QRコード_受けた配慮全回答excel版】 【QRコード_受けた配慮全回答pdf版】 4ページおわり