無償での遠隔PCサポート実施から見えてきた視覚障害者への就労支援の課題 筆頭演者:北神 あきら(きたがみ あきら) 共同演者:中川 文(なかがわ あや)、中村 昭一郎(なかむら しょういちろう) 2段組み構成 左側 【目的】 SPANが2021年と2022年に実施した、公的な就労支援が受けられない視覚障害者に対する無償での遠隔PCサポート(以下本サポート)の内容を分析するとともに、その課題を提起することにより、より充実した視覚障害者への就労支援を行うための指針とすることを目的とする。 なお、本サポートは、この事業に賛同した方々からの寄付により運営している。  【方法】 本サポートを受講した26名の地域、就労状況、職業、公的な支援が受けられない理由、内容、また受講後に寄せられた感想などについて分析した。 (1)受講者の所在地 北海道から九州まで全国にわたる16都道府県から受講。 (北海道、岩手、群馬、千葉、埼玉、東京、新潟、静岡、愛知、大阪、鳥取、広島、愛媛、福岡、熊本、宮崎) (2)受講者の状況 円グラフで配置。在職者65.4%、求職者34.6%の単純な円グラフ。 (3)職業 (受講者のうち在職者の職業) 表で配置。 2列8行のシンプルな表で職業と割合を%で多い順番に。 職業/割合 事務職/34.6% 公務員/11.5% 大学生/11.5% ヘルスキーパー/7.7% 福祉職/7.7% 自営業/3.8% その他/23.1% (4)公的な就労支援が受けられない理由 積み上げ横棒のグラフで配置。左から地域的な事情73.1%、制度上の問題19.2%、職場の無理解3.8%、通所困難3.8% (5)支援内容 個別のニーズに合わせ様々な支援を行った。WordやExcelなどのOffice製品が多かったが、実際の業務で使用するデータ作成に関する希望もあった。 (Windows、弱視対応、Word、Excel、Outlook、PPT、VBA、Edge、Chrome、Adobe、Zoom、Teams、MyMail、NetReader その他個別の内容) ここまでで2段組構成左側おわり ここから右側 (6)受講者の感想 3個の表で配置。   無償での遠隔就労サポートを受講した感想 /割合 % レベルアップを実感できた・自信がついた・業務の幅が広がった・さっそく役に立った 等 /65% 一人一人の希望の受講内容やレベルに合わせた丁寧な指導を受けられたのがよかった・少人数でよかった 等 /35% 身近に視覚障害者向けの音声PCのサポートや就労に向けた指導を受けられる場所がない /23% 金銭的メリットが大きい /19% 視覚障害者の指導者から学ぶことで、質問が伝えやすかった・安心感があった /19% 移動の負担が少ないメリットが大きい /15% 全5回10時間の講座があっという間だった・また機会があれば受講したい・このような講座がもっと増えればいいと思う /15% SPANとつながれたことで、今後も疑問を質問できる場所があるという安心感がある /8% 事前の丁寧な打ち合わせで個別の希望を伝えられたので安心した /8% わかりやすい資料や録音データで復習ができるのがよかった /8% 対面とほぼ変わりなくサポートが受けられてよかった /4% サポートに対する要望や意見 /割合 % 個別のニーズに沿った時間や内容に柔軟な対応がよかった・色々なアプローチの仕方を教えてもらえたので自分に合った操作方法を見つけることができた・音声とキー操作の可能性に感激した 等 /27% 丁寧で分かりやすいサポート・明るい雰囲気で受講できた・スキルと人間性を備えたサポートだった /23% こういったサポート体制の拡大を希望・必要としている人に情報が届くことを希望 /19% 引き続き受講したい・新しいアプリや新機能に対応した講座、基本が学べる講座などでスキルアップしたい 等 /19% 遠隔で受講できたことがよかった・通信環境も画面共有も対面と遜色なかった・録音機能による復習ができたのもよかった /15% 受講者側にも基礎知識があればもっと効率よく受講できたかもしれない・PCの更新や録音機能の確認など事前にできることはやっておけばよかった /8% SPANの今までのサポートのノウハウや受講内容を公開して検索できるようにしてほしい /4% 支援者向けの研修会、勉強会の開催を希望 /4% 公的な就労支援についての要望や意見 /割合 % 全国どこにいても同じように支援が受けられる体制をのぞむ /38% 視覚障害者のPC支援ができる指導者やジョブコーチなどが不足している・支援者向けの講習も充実させてほしい /12% 今回のような講座を継続的に受講できることを希望・寄付金で活動するのには限界があるので、行政主導で各地域の支援への取り組みをしてほしい /12% 個々の障害やニーズに合った支援体制が広がることを希望・職種に関係なく利用できる制度にしてほしい /12% 公的サポートを増やしてほしい・視覚障害者当事者に支援の情報が届くようにしてほしい /12% 遠隔で受講できる体制を充実させて継続的に受講できるようにしてほしい・遠隔なら地域格差をなくすことができる /12% 就労のために実践的な訓練ができる機会を望む /8% 応用を学べる機会を増やしてほしい・スキルアップの機会が増えることを望む /8% 入所施設でもSPANのような遠隔支援をしている団体と提携してほしい /4% 当事者も就労支援のために何が必要か考えて行動していきたい /4% 前例の無いことでも受け入れてほしい(障害福祉サービス、就労支援など) /4% 晴眼者向けにも情報提供してほしい・知識として誰でも情報を手に入れることができる環境を整えてほしい・普通学校などでも情報を入手できるとうれしい /4% 申請方法が簡単な就労継続のための補助金制度を望む /4% 就労につながる求人を増やしてほしい /4% 就労支援の観点にとらわれず、手続きが簡単なサポートシステムが構築されるのを希望 /4% 今回のような無償のサポートはありがたいが受講できる人数が限られている、必要な人に行き渡るように有償支援を継続的に行ってほしい /4% オンライン受講も障害福祉サービス等の支給対象にしてほしい /4% (7)課題と対策 【課題】 ・就労支援の状況には、地域格差が大きい ・在職者や公務員などが受講できる職業訓練がほとんどない ・遠隔で受講できる訓練が少ない ・支援機関の間での就労支援に関する情報共有が不十分 【対策】 ・遠隔を利用するなど、地域を超えた就労支援の充実 ・自立訓練などを利用した、在職者や公務員なども受講できる支援の充実 ・遠隔を含む訓練方法を柔軟に選択できる制度面の改革 ・支援機関の間での訓練教材を含めた情報の共有 まとめ (視覚障害者への就労支援の充実のために) ・遠隔の有用性を活かした支援を広げていきたい。 ・支援機関の間の連携が重要だと考える。そのためには、就労支援機関の組織化も一つの方法ではないだろうか。 ・地域や職業に関係なく、だれもが必要な情報を入手し支援が受けられる社会を目指したい。 SPANは今後も視覚障害者の就労を支援する活動を続けていきます。