財務関数は、会計処理に関連するさまざまな計算を行います。
サンプルデータfinance-function_es.xlsx「財務関数(演習).xlsx」を開きます。
尚、このマニュアルでは特に断らない限り、ショートカットキーで「関数の挿入」ダイアログ ボックスを開き、「関数の分類」から関数名のリストを表示させる手順で説明します。
その他の方法での関数の入力手順については、関数の入力方法を参照してください。
財務関数リストの表示
「関数の挿入」ダイアログ ボックスでは、以下の手順で財務関数のリストを表示させることができます。
- 1. 数式を入力するセルに移動します。
- 2. Shift + F3 キーを押して「関数の挿入」ダイアログ ボックスを開きます。
- 3. Tab キーを押して「関数の分類」のコンボ ボックスに移動します。
- 4. 上下方向 キーを押して「財務」に移動してTab キーを押します。関数名のリストが表示されます。
(注) 各関数の入力手順の説明は、関数名のリストが表示された状態から行います。
定率法による減価償却費を求めるDB関数
DB関数は、定率法により、特定の期における資産の減価償却費を求めます。
「定率法」とは、固定資産を定められた耐用年数に従って、一定の利率で減価償却費として費用計上する方式で、対象となる資産は、建物や機械、また備品など、経年変化に従いその価値が減少していくものです。
【書式】 =DB(取得価額,残存価額,耐用年数,期間,[月])
【説明】 取得価額： 必ず指定します。資産の購入価格です。
残存価額： 必ず指定します。減価償却が終了した時点での資産の価格です。税務上定められている価格(取得価格に対して5%、あるいは10%)を指定するのが一般的です。
耐用年数： 必ず指定します。税務上定められている資産の償却年数を指定します。
期間： 必ず指定します。減価償却費を求める期、つまり耐用年数の何年目に当たるかを指定します。
月： 省略可能です。資産を購入した期、つまり年度の中で償却の対象となる月数を指定します。省略した場合「12」とみなされます。
ここではサンプルデータのシート「DB」のセルB9からB13までに、セルA6からD6までの条件に従って、各年度の減価償却費を求めます。
シート「DB」を選択します。
- 1. セルB9に移動します。
- 2. 「関数の挿入」ダイアログ ボックスから、財務関数のリストを表示させます。
- 3. 下方向 キーを押して「DB」に移動してEnter キーを押します。関数入力のウィンドウが開き「取得価格」が選択されています。
- 4. 「取得価格」に『a6』と入力してからF4 キーを押して絶対参照にします。
(注1) 絶対参照にするのはこの数式をコピーして貼り付けるためです。
- 5. Tab キーを押して「残存価格」に移動します。
- 6. 「残存価格」に『b6』と入力してからF4 キーを押して絶対参照にします。
- 7. Tab キーを押して「耐用年数」に移動します。
- 8. 「耐用年数」に『c6』と入力してからF4 キーを押して絶対参照にします。
- 9. Tab キーを押して「期」に移動します。
- 10. 「期」に『1』と入力します。これは、耐用年数の1年目という意味です。
- 11. Tab キーを押して「月」に移動します。
- 12. 「月」に『d6』と入力してからF4 キーを押して絶対参照にします。
- 13. Enter キーを押します。セルB9に第1年目の減価償却費が表示されます。
【入力された数式】 =DB($A$6,$B$6,$C$6,1,$D$6)
- 14. Ctrl + C キーを押してセルB9の数式をコピーします。
- 15. 下方向 キーを押してセルB10に移動します。
- 16. Shift + 下方向 キーを押してセルB13までを範囲選択します。
- 17. コピーした数式を「数式の貼り付け」で貼り付けます。
- 18. セルB10に移動してからF2 キーを押して編集状態にします。
- 19. 左方向 キーを押して「,1,$D$6)」の「1」に移動してからDelete キーを押して「1」を削除し、『2』と入力してEnter キーを押します。セルB10に第2年目の減価償却費が表示されます。
【入力された数式】 =DB($A$6,$B$6,$C$6,2,$D$6)
- 20. セルB11に移動してからF2 キーを押して編集状態にします。
- 21. 左方向 キーを押して「,1,$D$6)」の「1」に移動してからDelete キーを押して「1」を削除し、『3』と入力してEnter キーを押します。セルB11に第3年目の減価償却費が表示されます。
【入力された数式】 =DB($A$6,$B$6,$C$6,3,$D$6)
- 22. セルB12に移動してからF2 キーを押して編集状態にします。
- 23. 左方向 キーを押して「,1,$D$6)」の「1」に移動してからDelete キーを押して「1」を削除し、『4』と入力してEnter キーを押します。セルB12に第4年目の減価償却費が表示されます。
【入力された数式】 =DB($A$6,$B$6,$C$6,4,$D$6)
- 24. セルB13に移動してからF2 キーを押して編集状態にします。
- 25. 左方向 キーを押して「,1,$D$6)」の「1」に移動してからDelete キーを押して「1」を削除し、『5』と入力してEnter キーを押します。セルB13に第5年目の減価償却費が表示されます。
【入力された数式】 =DB($A$6,$B$6,$C$6,5,$D$6)
(注2) 耐用年数は4年ですが、償却開始が期の途中なので5年目にまたがることになります。
(注3) 減価償却額は「\」(円マーク)をつけた通貨表示形式になっています。
【ワンポイント】 DB関数の計算だけでは残存価格にならないので、5年目にはセルB14の償却額が調整分として追加計上されます。
実質金利を求めるEFFECT関数
EFFECT関数は、名目年利率に1年あたりの複利計算回数を加味した実質年利率を求めます。
【書式】 =EFFECT(名目利率,複利計算回数)
【説明】 名目利率： 必ず指定します。名目の年間利率です。
複利計算回数： 必ず指定します。1年あたりの複利計算回数です。
ここではサンプルデータのシート「EFFECT」のセルC4に、セルA4の名目利率をセルB4の回数分複利計算をした場合の実質利率を表示します。
シート「EFFECT」を選択します。
- 1. セルC4に移動します。
- 2. 「関数の挿入」ダイアログ ボックスから、財務関数のリストを表示させます。
- 3. 下方向 キーを押して「EFFECT」に移動してEnter キーを押します。関数入力のウィンドウが開き「名目利率」が選択されています。
- 4. 「名目利率」に『a4』と入力します。
- 5. Tab キーを押して「複利計算回数」に移動します。
- 6. 「複利計算回数」に『b4』と入力してEnter キーを押します。セルC4に、セルA4の名目利率「3.221%」を年間4回複利計算した場合の実質利率「3.260%」が表示されます。
【入力された数式】 =EFFECT(A4,B4)
一定利率のローンの支払回数を求めるNPER関数
NPER関数は、同一の利率で一定額を定期的に支払った場合の支払回数を求めます。 例えば、ローンなどの支払回数を求める際に利用すると便利です。
【書式】 =NPER(利率,定期支払額,現在価値,[将来価値],[支払期日])
【説明】 利率： 必ず指定します。投資あるいは借入などの利率です。
(注1) 利率と支払回数は相互の関係を一致させておく必要があります。例えば、支払いが毎月行われる場合は、年間利率の12分の1の利率で指定します。
定期支払額： 必ず指定します。毎回の支払額です。
現在価値： 必ず指定します。投資あるいは借入などの現在価値、つまり、借入金などの合計額です。
将来価値： 省略可能です。投資あるいは借入などで最後の支払いを行った後に残る額です。省略した場合は「0」とみなされます。
例えば、ローンなどの借入金は最終的には「0」になります。
支払期日： 省略可能です。支払いがいつ行われるかを「0」または「1」で指定します。
| 支払期日 | 支払いが行われる時期 |
|---|---|
| 0 または省略 | 各期の期末 |
| 1 | 各期の期首 |
ここではサンプルデータのシート「NPER」のセルD4に、セルC4の借入金をセルA4の利率で、毎回セルB4で指定する金額だけ支払い、最終的には「0」となるための支払回数を表示します。
シート「NPER」を選択します。
- 1. セルD4に移動します。
- 2. 「関数の挿入」ダイアログ ボックスから、財務関数のリストを表示させます。
- 3. 下方向 キーを押して「NPER」に移動してEnter キーを押します。関数入力のウィンドウが開き「利率」が選択されています。
- 4. 「利率」に『a4』と入力します。
- 5. Tab キーを押して「定期支払額」に移動します。
- 6. 「定期支払額」に『b4』と入力します。
- 7. Tab キーを押して「現在価値」に移動します。
- 8. 「現在価値」に『c4』と入力してEnter キーを押します。セルD4に、セルC4の元金「2,000,000円」をセルA4の利率「0.268%」でセルB4の支払額「70,000円」を毎月支払った場合の支払回数「29.76281」が表示されます。
【入力された数式】 =NPER(A4,B4,C4)
(注2) 「定期支払額」の数値には「-」(マイナス)がついていますが、これは「現在価値」が減少していくことを示しているためです。
一定利率のローンの定期支払額を求めるPMP関数
PMP関数は、一定利率の支払いを定期的に行う場合の定期支払額を求めます。
例えば、ローンの1回あたりの支払額を計算する際に利用すると便利です。
【書式】 =PMT(利率,期間,現在価値,[将来価値],[支払期日])
【説明】 利率： 必ず指定します。ローンなどの利率です。
期間：必ず指定します。支払回数の合計です。
(注1) 利率と期間を指定する際は、相互の関係を一致させておく必要があります。例えば、支払いが毎月行われる場合は、年間利率の12分の1の利率で指定します。
現在価値： 必ず指定します。ローンなどの借入金の合計です。
将来価値： 省略可能です。ローンなどの支払いが完了したあとの残りです。省略した場合は「0」とみなされます。
支払期日： 省略可能です。支払いがいつ行われるかを「0」または「1」で指定します。
| 支払期日 | 支払いが行われる時期 |
|---|---|
| 0 または省略 | 各期の期末 |
| 1 | 各期の期首 |
ここではサンプルデータのシート「PMT」のセルD4に、セルC4の借入金をセルA4の利率で、セルB4で指定する回数毎月支払い、最終的には「0」となるための毎回の支払額を表示します。
シート「PMT」を選択します。
- 1. セルD4に移動します。
- 2. 「関数の挿入」ダイアログ ボックスから、財務関数のリストを表示させます。
- 3. 下方向 キーを押して「PMT」に移動してEnter キーを押します。関数入力のウィンドウが開き「利率」が選択されています。
- 4. 「利率」に『a4』と入力します。
- 5. Tab キーを押して「期間」に移動します。
- 6. 「期間」に『b4』と入力します。
- 7. Tab キーを押して「現在価値」に移動します。
- 8. 「現在価値」に『c4』と入力してEnter キーを押します。セルD4に、セルC4の借入金「2,000,000円」をセルA4の利率「0.268%」でセルB4の期間「72ヶ月」支払った場合の1回あたりの支払額「\30,577」が表示されます。
【入力された数式】 =PMT(A4,B4,C4)
(注2) 支払額は「\」(円マーク)をつけた通貨表示形式になっています。また、借入金を返済するという意味で、金額は「-」(マイナス)をつけた表示となっています。
投資の現在価値を求めるPV関数
PV関数は、投資または借入金の現在価値を求めます。つまり、借入の場合は、借入金額の合計を取得します。
【書式】 =PV(利率,期間,定期支払額,[将来価値],[支払期日])
【説明】 利率： 必ず指定します。ローンなどの利率です。
期間：必ず指定します。支払回数の合計です。
(注1) 利率と期間を指定する際は、相互の関係を一致させておく必要があります。例えば、支払いが毎月行われる場合は、年間利率の12分の1の利率で指定します。
定期支払額： 省略可能です。毎回の支払額です。
定期支払額を省略した場合は、将来価値を必ず指定します。
将来価値： 省略可能です。ローンなどの支払いが完了したあとの残りです。省略した場合は「0」とみなされます。
将来価値を省略した場合は、定期支払額を必ず指定します。
支払期日： 省略可能です。支払いがいつ行われるかを「0」または「1」で指定します。
| 支払期日 | 支払いが行われる時期 |
|---|---|
| 0 または省略 | 各期の期末 |
| 1 | 各期の期首 |
ここではサンプルデータのシート「PV」のセルD4に、セルA4の利率でセルB4の期間(月数)、セルC4の金額を支払った場合の借入金の合計額を表示します。
シート「PV」を選択します。
- 1. セルD4に移動します。
- 2. 「関数の挿入」ダイアログ ボックスから、財務関数のリストを表示させます。
- 3. 下方向 キーを押して「PV」に移動してEnter キーを押します。関数入力のウィンドウが開き「利率」が選択されています。
- 4. 「利率」に『a4』と入力します。
- 5. Tab キーを押して「期間」に移動します。
- 6. 「期間」に『b4』と入力します。
- 7. Tab キーを押して「定期支払額」に移動します。
- 8. 「定期支払額」に『c4』と入力してEnter キーを押します。セルD4に、セルA4の利率「0.268%」でセルB4の期間「72ヶ月」、セルC4の支払額「70,000円」支払った場合の借入金の合計「\4,578,543」が現在価値として表示されます。
【入力された数式】 =PV(A4,B4,C4)
(注2) 現在価値は「\」(円マーク)をつけた通貨表示形式になっています。
定額法による減価償却費を求めるSLN関数
SLN関数は、定額法により1期あたりの資産の減価償却費を求めます。
「定額法」とは、固定資産を定められた耐用年数に従って、一定の金額で減価償却費として費用計上する方式で、対象となる資産は、建物や機械、また備品など、経年変化に従いその価値が減少していくものです。
【書式】 =SLN(取得価額,残存価額,耐用年数)
【説明】 取得価額： 必ず指定します。資産の購入価格です。
残存価額： 必ず指定します。減価償却が終了した時点での資産の価格です。税務上定められている価格(取得価格に対して5%、あるいは10%)を指定するのが一般的です。
耐用年数： 必ず指定します。税務上定められている資産の償却年数を指定します。
ここではサンプルデータのシート「SLN」のセルD4に、セルA4からC4の条件に従って、1期あたりの減価償却費を求めます。
シート「SLN」を選択します。
- 1. セルD4に移動します。
- 2. 「関数の挿入」ダイアログ ボックスから、財務関数のリストを表示させます。
- 3. 下方向 キーを押して「SLN」に移動してEnter キーを押します。関数入力のウィンドウが開き「取得価格」が選択されています。
- 4. 「取得価格」に『a4』と入力します。
- 5. Tab キーを押して「残存価格」に移動します。
- 6. 「残存価格」に『b4』と入力します。
- 7. Tab キーを押して「耐用年数」に移動します。
- 8. 「耐用年数」に『c4』と入力してEnter キーを押します。セルD4に、セルA4の取得価格「250,000円」で、セルB4の残存価格「25,000円」、セルC4の耐用年数「4年」の資産の1期あたりの減価償却額が表示されます。
【入力された数式】 =SLN(A4,B4,C4)
(注) 減価償却額は「\」(円マーク)をつけた通貨表示形式になっています。
操作の結果はサンプルデータfinance-function_kk.xlsx「財務関数(結果).xlsx」をご覧ください。